日本は何タイプの国か?
日本の美徳といえば、謙虚さ。集団では空気を読み、和を乱さない—— エニアグラムで言えば、9(平和)や6(忠実)の匂いがします。 一方で4のような独創は「出る杭は打たれる」。アメリカはどう見ても3(達成)の国に見える。国や民族にも、タイプがあるのでは?——これ、半分本当で、半分違います。そしてその「違う半分」が、いちばん面白いのです。
まず、意外な研究結果から
「国民性」については、有名な国際研究があります。 数十の国で「あなたの国の典型的な人」のイメージを集め、 同じ国の住民の実際の性格測定(ビッグファイブ)の平均と突き合わせた—— 結果は、ほぼ一致しませんでした。 「典型的な日本人」「典型的なアメリカ人」のイメージは、 実際にそこに住む人たちの性格の平均とは、別物だったのです。
じゃあ国民性は幻かというと、日々の実感がそれを許しませんよね。 日本の会議とアメリカの会議は、明らかに空気が違う。 この矛盾を解く鍵が、このコラムの本題です。
文化は「性格の平均」ではなく「報酬盤」
文化が決めているのは、メンバーの性格ではありません。どの戦略が「美徳」として報酬され、 どの戦略が課税されるか——いわばゲームの報酬盤です。
日本という盤面では、9の通貨(調和、控えめ、場を乱さない)と 6の通貨(慎重、忠誠、きちんとした備え)が高く買い取られます。 逆に、4の通貨(人と違うこと)と8の通貨(強い自己主張)には「出る杭」税がかかる。 アメリカの盤面では、3の通貨(達成、自己PR)が基軸通貨で、 9の謙遜はむしろ「存在感がない」と減点される。 つまり——「日本人は9タイプ」なのではなく、 「日本は9タイプに追い風が吹く盤面」なのです。 盤面と駒は、別物です。日本にも8の人は大勢います。逆風の中を、歩いているだけで。
生きづらさの正体、のひとつ
親子のコラムで、 「育てやすい子」は子どもの属性ではなく親との適合の属性だ、と書きました。 まったく同じことが、文化のスケールで起きます。「生きやすい国」は、人の属性ではなく、 タイプ×盤面の適合の属性です。
日本で生きる4の人は、本人が変なのではなく、独創に課税される盤面で独創を持ってしまった。 日本の8の人は、乱暴なのではなく、直球に課税される盤面で直球を投げている。 「海外に出たら、急に楽になった」という人の話をよく聞きますが、 あれは本人が変わったのではありません。盤面が変わって、 自分の通貨のレートが上がったのです。 あなたが長年感じてきた生きづらさの何割かは、あなたの欠陥ではなく、 風向きの問題かもしれません。
会社にも、部活にも、家族にも盤面はある
このレンズは、国より小さな集団にそのまま使えます。 会社の「社風」は、まさに報酬盤です。 体育会系の営業会社は8と3の盤面(押しと数字が通貨)。 老舗メーカーは1と6の盤面(正確さと手堅さが通貨)。 スタートアップは7と3の盤面(スピードと新しさが通貨)。就職のミスマッチの少なくない部分は、 能力ではなくタイプ×社風の適合の問題です。 優秀なのに潰れていく人は、しばしば「悪い駒」ではなく「盤面違いの駒」です。
そして家族にも、「わが家の公式タイプ」があります。 勤勉こそ正義の家、明るさこそ正義の家、波風立てないのが正義の家。 その家の公式通貨と違う通貨を持って生まれた子がどうなるかは——怒られた記憶のコラムに 書いたとおりです。
使い方と、いつもの注意
このレンズの正しい使い方は、2つです。 ひとつは読み直し—— 「自分の生きづらさは、欠陥ではなく風向きだったかもしれない」。 もうひとつは戦略—— 自分のタイプの通貨と、いま立っている盤面(国・会社・家族・コミュニティ)の通貨を見比べる。 追い風なら、それに感謝して使い切る。逆風なら、盤面の中で翻訳を工夫するか、盤面ごと変える(転職も、移住も、コミュニティ選びも、立派な戦略です)。
注意はいつものやつを、スケールを変えて。 「日本人だから9でしょ」と個人に当てはめた瞬間、このレンズは偏見の道具になります。 盤面の話は、盤面の話。駒の一つひとつは、9色全部の可能性を持った別の人間です。 文化は凸凹理論で言う 「場を曲げる質量」の、たぶん最大のもの—— だからこそ、盤面と駒を混同しないことが、一番大事な作法になります。